口腔機能の低下が及ぼす影響とは?【オーラルフレイル】
- 村上 拓斗

- 8月22日
- 読了時間: 5分

「最近、硬いものが食べにくくなった」
年齢を重ねると、このような変化を感じることがあります。
こうした口の機能の小さな衰えは、単に「食べにくくなる」という問題だけではないかもしれません。
口の機能は、食べる・話す・感情を表現するといった日常生活に深く関係しており、特に高齢者では生活の質を支える重要な要素とされています。
2026年に発表された研究では、日本の地域在住高齢者を対象に、「オーラルフレイル(口の虚弱)」と幸福感(well-being)にはどのような関係があるのかが調査されました。
今回はこの研究をもとに、できるだけわかりやすく解説していきます。
ぜひ最後まで読んでみてください!
■「オーラルフレイル」とは?
オーラルフレイルとは、簡単にいうと
「口の機能や健康状態が少しずつ衰えている状態」のことです。
今回の研究では「OF-5」という5項目のチェックリストが使用されました。
チェックされたのは、
自分の歯が20本未満
硬いものが食べにくくなった
お茶や汁物などでむせることがある
口の乾燥を感じる
以前より発音しにくくなった
このうち2項目以上に当てはまる場合を「オーラルフレイル」としています。
オーラルフレイルは「歯が少ない」ということだけではなく、口全体の機能を含めて考えるのがポイントです。
■オーラルフレイルは幸福度と関連する?
今回の研究で最終的な分析対象となったのは、70歳以上の男女849人です。
男性503人、女性346人で、平均年齢は75.8歳でした。
研究者は参加者の、
オーラルフレイル
身体的フレイル
低栄養
抑うつ症状
認知機能低下
社会的孤立
幸福感
などを評価しました。
そして、
「オーラルフレイルがある人ほど幸福感が低いのか?」
「その間に低栄養や抑うつ、社会的孤立などが関係しているのか?」
を分析しています。
■約4割の高齢者にオーラルフレイルがみられた
対象となった849人のうち、
オーラルフレイルが認められた人:40.2%
そのほか、
身体的フレイル:6.5%
低栄養:29.3%
抑うつ症状:30.6%
認知機能低下:5.4%
社会的孤立:33.9%
さらにオーラルフレイルがある人では、ない人と比べて、
「低栄養」「抑うつ症状」「身体的フレイル」「認知機能低下」「社会的孤立」のいずれとも有意な関連が確認されました。
■低栄養との関連
ここは非常にわかりやすい部分です。
噛む力や舌の機能などが低下すると、硬いものや繊維の多い食品が食べにくくなります。
肉→食べにくい
野菜→ 噛みにくい
全粒穀物など→避けるようになる
↓
食べられる食品が少しずつ偏ってしまう可能性。
口腔機能が低下すると肉・生野菜・全粒穀物などの摂取が難しくなり、柔らかく食べやすい食品へ移行する可能性が説明されています。
さらに、
食べると疲れる
口の中に不快感がある
噛むのに時間がかかる
その結果、身体に必要な栄養素が不足する可能性があり、高齢者にとって栄養素の不足は、筋肉量や身体機能を維持するうえでも深刻な問題です。
つまり、
口腔機能低下
↓
食べられるものが減る
↓
食事の量や種類が減る
↓
栄養状態が悪化する
という流れが考えられるわけです。
■抑うつ症状との関連
今回の研究で特に注目したいのが抑うつ症状です。
オーラルフレイルと幸福感の関係を説明する要因として、抑うつ症状が有意な「媒介要因」となりました。
口の問題があると、
「うまく食べられない」
「飲み込むのが不安」
「人前で食べるのが嫌になる」
「話しにくい」
といった日常生活にも負担になる可能性があります。
歯の喪失、口の乾燥、飲み込みにくさなどの口腔問題と抑うつ症状との関連が紹介されており、今回の研究では抑うつ症状が最も一貫した媒介要因だったと報告されています。
■社会的孤立との関連
もう一つ興味深いのが社会的孤立です。
口は食事だけでなく、
「話す」「笑う」「人とコミュニケーションをとる」
ためにも使います。
口の運動機能が低下すれば、コミュニケーションそのものが難しくなる場合がありますし、歯が少なくなることで見た目を気にして、
「人前で笑いたくない」
「人と話したくない」
「一緒に食事をしたくない」
と感じる人もいるかもしれません。
→社会的な引きこもりや交流の減少につながる可能性
■口の健康は口の中だけの問題ではない
低栄養
抑うつ症状
社会的孤立
が、オーラルフレイルと幸福感をつなぐ重要な経路として示されました。
口の健康を、口の中だけの問題として考えないことがポイントです。
■まとめ
オーラルフレイルと幸福感の関係には、特に栄養状態・抑うつ症状・社会的孤立が関係している可能性がある。
健康というと、
「運動する」
「筋肉をつける」
「食事を整える」
といったことに目が向きやすいですが、そもそもしっかり食べるためには口の機能が必要です。
そして口は、人と話したり、笑ったり、一緒に食事を楽しんだりするためにも欠かせません。
口腔機能を維持することが年齢を重ねていくうえで重要な要素の一つであることを改めて考えさせてくれる内容といえるでしょう。
引用文献
Agatha Ravi Vidiasratri,et al. Association between oral frailty and well-being in community-dwelling older adults in Japan.J Prosthodont Res.2026 May 23.
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