スポーツドリンクは歯に悪い?唾液への影響を科学的に解説

釧路市にあるパーソナルジムR.Physio labスタッフの村上です!
運動中の水分補給に利用するスポーツドリンクが、歯の健康にも関係している可能性があることをご存じでしょうか?
スポーツドリンクは、水分や電解質を効率よく補給できる飲料として、スポーツをする方を中心に広く利用されています。
しかし、スポーツドリンクには糖質や酸性成分を含むものもあり、飲み方によっては口の中の環境に影響する可能性があります。
2026年に発表された研究では、14〜17歳の男子サッカー選手52人を対象に、スポーツサプリメントの摂取と歯の健康状態、唾液の性質との関係が調査されました。
今回はこの研究をもとに、スポーツドリンクと歯の健康の関係や、運動中の水分補給で意識したいポイントについて、わかりやすく解説していきます!
ぜひ最後まで読んでみてください!
■スポーツドリンクはなぜ歯に影響する可能性があるのか?
まず知っておきたいのは、歯の健康には口の中の「酸性度」が深く関係しているということです。
酸性度を示す指標として「pH(ピーエイチ)」があります。
pHは0〜14の数値で表され、7が中性、7より低いほど酸性、7より高いほどアルカリ性を示します。
歯の表面を覆っているエナメル質は、酸性の環境にさらされることで、ミネラルが溶け出しやすくなります。
このように、酸によって歯の表面が化学的に溶ける現象を「酸蝕(さんしょく)」と呼びます。
スポーツドリンクには、糖質やクエン酸などの酸性成分を含む製品があります。
そのため、頻繁に摂取することで口の中の酸性環境に影響し、歯の健康に関係する可能性が指摘されています。
ただし、すべてのスポーツドリンクが同じ成分や酸性度というわけではありません。
また、歯への影響は飲料の種類だけでなく、飲む頻度や時間、口腔内の状態などによっても異なると考えられます。
■唾液は歯を守る重要な役割を持っている
歯の健康を考えるうえで、もう一つ重要なのが「唾液」です。
唾液は、単に口の中を潤すだけではありません。
口の中の環境を整え、歯を健康に保つためにも重要な働きをしています。
特に注目したいのが、次の3つの働きです。
①酸を中和する働き
唾液には、口の中の酸を中和し、pHの回復を助ける働きがあります。
②歯の再石灰化を助ける働き
歯の表面から失われたミネラルを補い、歯の状態を維持するために重要な役割を果たします。
③口の中を洗い流す働き
飲食後に残った糖分や酸などを洗い流し、口腔内の環境を整える働きがあります。
つまり、唾液のpHや分泌量は、歯の健康を維持するための重要な要素なのです。
■どのような研究が行われたのか?
2026年に発表された研究では、トルコのプロサッカークラブに所属する14〜17歳の男子選手52人を対象に、スポーツサプリメントの摂取状況と口腔内の健康状態との関係が調査されました。
研究では、スポーツドリンクやスポーツバー、ビタミン類などの摂取状況を確認し、次の項目を評価しました。
虫歯や治療済みの歯などを評価するDMFT指数
歯の表面が酸によって溶ける酸蝕の有無
安静時と刺激時の唾液のpH
刺激によって分泌される唾液の量
唾液の酸を中和する能力
そのうえで、スポーツサプリメントを摂取する選手と摂取しない選手の違いを比較しています。
※DMFT指数
虫歯になっている歯、虫歯によって失った歯、治療済みの歯の本数を合計した指標です。
■スポーツドリンクを飲む選手は唾液のpHが低かった
今回の研究で注目したいのが、スポーツドリンクの摂取と唾液のpHとの関係です。
〇スポーツドリンクを週1回以上摂取する選手と、それ以外の選手を比較
→摂取する選手では、安静時と刺激時の両方で唾液のpHが統計的に有意に低いことが確認されました。
これは、摂取しない選手と比較して酸性側に傾いていたことを意味します。
ただし、唾液のpHが低いことと、実際に歯が損傷していることは同じではありません。
今回の結果は、スポーツドリンクの摂取状況と唾液の酸性度に関連がある可能性を示したものです。
■スポーツドリンクと唾液の分泌量にも関連が
刺激時の唾液分泌量を比較したところ、
スポーツドリンク非摂取群:8.0mL
スポーツドリンク摂取群:7.0mL
つまり、スポーツドリンクを摂取する選手では、刺激時の唾液分泌量が少ない傾向が確認されたのです。
唾液の分泌量が少なくなると、口の中に残った酸や糖分を洗い流す働きが弱くなる可能性があります。
また、唾液による酸の中和や歯の再石灰化にも影響することが考えられます。
■スポーツドリンクを飲むと虫歯が増えるのか?
ここで気になるのが、スポーツドリンクを飲むことで虫歯や歯の酸蝕が増えるのかという点です。
スポーツサプリメントの摂取と、虫歯の経験を評価するDMFT指数や歯の酸蝕との間に、統計的に有意な関連は認められませんでした。
つまり、スポーツドリンクを摂取している選手で、虫歯や歯の酸蝕が明確に多いという結果にはならなかったのです。
ただし、これまでの結果を踏まえてもスポーツドリンクの使用に関しては、予防策としての意識を高めるべきであると研究でも指摘しています。
■運動中の水分補給では何を意識すれば良いのか?
スポーツドリンクは、長時間の運動や大量に汗をかく環境では、水分・電解質補給やエネルギー補給に役立つ場合があります。
一方で、日常生活や短時間の軽い運動では、必ずしもスポーツドリンクが必要とは限りません。
大切なのは、運動時間や発汗量、運動強度に応じて飲料を選ぶことです。
例えば、
日常的な水分補給では水や無糖のお茶を基本とする
長時間の運動や大量の発汗がある場合には、必要に応じてスポーツドリンクを活用する
といった方法が考えられます。
また、糖質や酸性成分を含む飲料を長時間にわたって少しずつ飲み続ける習慣にも注意が必要です。
必要のない場面で頻繁に飲むことを避け、飲んだ後は水で口をすすぐなど、口腔内の環境にも配慮すると良いでしょう。
■研究の限界
今回の研究は一時点での状態を調査した横断研究であり、スポーツドリンクの摂取が唾液の変化を直接引き起こしたかどうかは明らかになっていません。
また、対象者が少なく、食習慣や口腔衛生などの影響も十分に調整されていないため、結果は慎重に解釈する必要があります。
■まとめ
スポーツドリンクを摂取する選手では、唾液のpHや刺激時の唾液分泌量が低い傾向
虫歯や歯の酸蝕との間には明確な関連は認められなかった
大切なのは、スポーツドリンクを良いもの、悪いものと単純に判断するのではなく、必要な場面で適切に活用することです。
歯や口腔内の健康にも目を向けていきましょう!
引用文献
Günalan E, et al. (2026).Sports supplement consumption, dental health, and salivary parameters in adolescent elite football players: A cross-sectional study.BMC Oral Health, 26, 1543.
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